肉食による深刻な環境破壊、土壌や河川、地下水が糞尿汚染…

牛のフィードロットでは、動物工場ならではの環境問題を引きこしています。牛は一頭当り一日に、大体20kgの糞尿を排泄し、その量は人間一人の十倍以上になると言われます。

アメリカには一万頭規模のフィードロットが一番多いのですが、そこから排泄される汚物は、何と人工12万都市から排泄される人間の屎尿の量にも匹敵します。この大量に排出される牛の糞尿が流れ出し、土壌や河川、地下水を汚染しているのです。

「肉食が地球を滅ぼす」中村 三郎著 “糞尿汚染に悩む” よりご紹介します。

■深刻な環境破壊、糞尿汚染に悩む

広い牧場で放し飼いにされていた昔は、牛たちは土の上を自由に歩き回り、あちこちに糞尿を撒き散らしてはいましたが、それでも少しも苦になりませんでした。

排泄物が自然の中で分解されて土壌に吸収され、植物を育てる栄養物に還元されていたためです。土壌を汚染するどころか、逆に富ませていたのであり、牛と土壌と植物の間に自然界の循環がうまく働いていたのです。

フィードロットでは、牛たちは狭い囲い地に監禁状態にされているので、排泄物を土に返すことができません。農業用肥料に利用するにしても、莫大なお金と時間と労力がかかり、結局は廃棄するしかありません。

多くのフィードロットでは浄化槽を設け、上澄み液を水で薄めて下水道に流した後、残った大量の汚物は土の中に埋めるといった方法で処理していると言われ、これでは汚染を招くのは当然の結果です。

アメリカには、大小合わせて約45,000のフィードロットがあります。大規模なものはカンザス、ネブラスカ、テキサスの南西部三州に集中していますが、そこから排泄される牛の排泄物は年間10億トンにも達します。

そして、その排泄物による河川や地下水の汚染は、国内にある全企業から排出される化学物質による汚染よりも遥かにひどいと言われます。牛の排泄物は他の動物と違って、危険な汚染物質にまみれているので、いっそうタチが悪いのです。

フィードロットの牛たちは、栄養価の高い濃厚飼料を食べます。その飼料には、タンパク質や窒素、リン酸などの化合物が添加され、さらに、病気予防の抗生物質や肥育効率を高めるホルモン剤も投与されます。したがって、牛の排泄物の中には、体内で吸収されなかったこれらの物質が多く含まれており、一層汚染を招く原因となっているのです。

フィードロットによる牛の大量生産は、糞尿と言う産業廃棄物の増加をもたらしただけでなく、かつては存在しなかった悪質な汚染物質による害を引き起こしているのです。


【出典】http://lin.alic.go.jp/alic/month/fore/2005/oct/spe-01.htm
    豪州での規制

大概の動物の糞尿は、河川に流入すると分解されてしまいますが、その際に水中から酸素を吸収します。排泄物が大量に流入すると河川の水は酸欠状態となって、生息している魚や水生生物が危険に晒されます。

そして、その排泄物に牛の糞尿のように窒素やリン酸などの汚染物質が混じっていれば、さらに魚たちの危険性は高くなり、殆ど死んでしまうこともあるのです。

実際、カンザス州のフィードロットから流出した牛の排泄物が河川を汚染し、カワマスなどの魚類が大量に死滅して、流域の漁民に大損害を与えたという事件が起きています。テキサス州では、浄化槽の損壊による糞尿の流出事故が発生し、地域の作物が被害に遭ってもいます。

■フィードロットは、悪臭公害の元

フィードロットは、悪臭公害の元にもなっています。牛たちが日々垂れ流す糞尿は膨大な量にのぼります。囲い地に山積みされた処理前の汚物から強烈な臭気が立ち上ります。

フィードロットは、住宅地から離れた公害に作られていますが、その臭気が風に乗って流れてきます。おまけに、臭いに引き寄せられたハエまで飛んできます。

そのために周辺の住民はおちおち食事をとることもできず、吐き気や頭痛、不眠に悩まされるなど、生活環境が乱されてしまうのです。住民が怒って、フィードロットの食肉業者に対し損害賠償を求める訴訟事件が度々起きているのです。

悪臭の成分は、主にアンモニア、硫化水素、トリメチルアミンですが、これらの物質はなかなか分解され難く、現代の先端技術をもってしても完全に臭いを消し去るのは困難だと言います。

フィードロットを経営するアグリビジネスは、悪臭を断つ特効薬の開発に躍起となってますが、今の処、石灰、塩素、カリウムなどを使った古典的な防臭剤で臭いを抑えるしかありません。殆ど効果はないのですが、それで何とか取り繕っているような状態です。

牛肉の消費拡大につれて、フィードロットはドンドンハイテク化してますが、その一方で汚染問題の解決は遅々として進まず、益々厄介なお荷物となりつつあるのです。

【出典】肉食が地球を滅ぼす 中村 三郎著

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